もう15年以上前のこと。記者1年生が高校の卒業式を取材し、もらい泣きしたという。記者クラブでその話を聞いた先輩の女性が、ひと言。「安い涙!」
 新聞記者は喜怒哀楽さまざまな場面に立ち会う。女性記者は「これからがもっと大変よ」と教えたかったのだろう。たぶん。
 記者30年生だが、この春は自信がない。いわき市内では今年も、原発事故で避難し、苦労を重ねた子どもたちが学びやを巣立つ。
 いわきに仮設校舎がある楢葉町の小中学校は、4月に町の本校舎に戻る。小6の13人は卒業式を最後に、町に戻る子、いわきの中学に進む子に分かれる。
 双葉郡から避難してきた双葉高と双葉翔陽高。本年度限りで休校となる。最後の卒業生は11人と12人。見送る在校生はいない。
 過去がある。2年前、双葉町の中学校の卒業式。式後、仮設校舎の前に生徒や教職員が一列に並んだ。ただ一人の卒業生を涙と拍手で送り出す姿に、シャッターを切れなくなった。
 自信がない。でも、今は退職し、母となったかの女性は、こう言ってくれるだろう。「トシだから、仕方ないですね」。たぶん。
(いわき支局長 古田耕一)