仙台市出身のピアニスト仲道郁代さんは、巧みな話術の持ち主である。東京・六本木の国立新美術館ロビーで開催されたコンサートで演奏の合間に話を聞き、そう実感した。
 例えばショパン。祖国ポーランドの内乱、恋人との別れなど、生涯の重要局面と曲との関係を端的に解説する。演奏を聴くと、音楽素人の自分にも、作家の曲に託した思いが伝わってくるような気になる。
 ただ、この音色を言葉で表現すると…。想像しても、なかなかふさわしい言葉が浮かばない。
 仙台市出身の作家、恩田陸さんの直木賞受賞作、「蜜蜂と遠雷」は国際ピアノコンクールを舞台とする人間模様を描き、演奏場面が繰り返し登場する。
 受賞会見で、東京支社の記者は宮沢賢治の詩集「春と修羅」をモチーフにした架空の曲について質問した。恩田さんは「この曲が聞こえるような気がする」という読者の感想を紹介し、「『春と修羅』の世界を読者の頭の中に鳴らせたことがうれしい」と語った。
 まさに音楽と文学の融合だ。「蜜蜂と遠雷」を読み返し、恩田さんの世界を味わっている。(東京支社編集部長 藤原陽)