本社ではトランクを引いた同僚記者とよくすれ違う。「どちらまで」「ちょっと○○まで」。部署によっては月の半分がホテル住まいという記者もいる。出張は記者の視点を広げ、記事を厚く、深くする上で欠かせない取材活動だ。
 会社を離れれば羽を伸ばしたくもなるが、出張先は一発勝負の世界。限られた時間に狙い通りの言葉を引き出せるか。いい場面に巡り会えるか。周到な準備をしてもなお、不安が付きまとう。空振りに終わり、帰路に就く新幹線ホームで途方に暮れたことがあった。
 長期連載中の「トモノミクス 被災地と企業」の取材範囲は、東北を中心に九州にまで及ぶ。CSR(企業の社会的責任)を足掛かりに東日本大震災からの復興と企業の在り方を探り、これまで23回掲載した。現場の記者4人の出張は計80回を超え、移動距離は3万5000キロに達している。
 連載はまだ全体の半分。より豊かな紙面展開を目指し、記者は全国を飛び回る。机にかじりつくのが商売の担当デスクは、心優しい記者たちが買ってくる土産のお裾分けにあずかり、かの地に思いをはせながら原稿とにらめっこする。
(報道部次長 今里直樹)