3月に入っても、頬をなでる風は冷たい。「春は名のみの…」。空に流れる雲を見上げると、唱歌の一節が頭に浮かぶ。季節の移ろいに思いを寄せるメロディーは、どこか切なかったような気がする。
 取材で縁を結んだ石巻市の知人夫妻が先日、東日本大震災の津波で犠牲になった3人の子どもの七回忌法要を営んだ。6年がたち、小学生、中学生となった幼なじみたちも参列した。
 墓前に手を合わせた後、しのぶ会があった。仲が良かった子どもたちが成長した姿にわが子の今を重ね、夫婦は過ぎ去った日々と改めて向き合った。5歳で亡くなった長男の初恋相手は思い出を振り返り、自作の曲を披露してくれた。
 小学5年になった少女は「きらきらした空の下で誰よりも輝いて見えた」という淡い恋心をピアノで奏でた。優しく美しい調べ。弾き終えた女の子はむせび泣きながら「ずっと忘れないよ」とつぶやき、夫婦に楽譜を手渡した。
 譜面に並んだ一つ一つの音符が、喪失感を埋めていくように思えた。記録用に頼まれた写真を撮るためにのぞいたファインダーが、少しかすんでいた。
(写真部次長 門田勲)