愛読書に元国土交通省河川局長で日本水フォーラム代表理事を務める竹村公太郎さんの著作がある。地形と気象に立脚した「下部構造」から歴史と今を語る。
 人間活動を役者の芝居、下部構造を舞台に例えれば「舞台の制約そのものが、芝居を規定する」。そんな観点からの文明論だ。
 「日本を訪れて気がついたのは、川が多く、水資源に恵まれていることだ」。約120年前に来日した発明家グラハム・ベルの、この言葉を枕に展開される水力発電論もその一つ。
 日本は急峻(きゅうしゅん)な地形のうえ年中、雨や雪が降る。そこにベルは無限のエネルギーの宝庫を見たとし、この元ダム技術者がある試算を披露する。ダムを新たに造らずとも、既存ダムに発電機を完備し運用を見直し、かさ上げなどすれば、100万キロワットの原発9基分の分散型電源が生まれる、と。
 実現可能性は別にしても下部構造論が教えてくれるのは、制約ある所与の舞台を再評価し最大限活用することこそが、理にかなう持続可能な道だということではないか、と思う。
 3.11は文明の転換点。そう規定し、エネルギーのことを考え続けたい。(論説副委員長 佐々木恵寿)