自分の家に入ろうとして警察官に職務質問をされたら通常はいい気持ちがしない。「大したもんだ。大いにやってくれ」。福島第1原発事故で全町避難する福島県双葉町の会社役員吉田俊秀さん(69)は感心し、警察官をそう激励した。
 5月下旬、大半を帰還困難区域が占める双葉町の店舗兼自宅に避難先の埼玉県から一時帰宅。裏口に回った時に声を掛けてきたのが、他県警から派遣されている若手警察官だった。
 町は、帰還困難区域に復興拠点を整備する事業が今後始まるなど、人の出入りが増える。吉田さんはこれまで、少なくとも自宅に3回泥棒に入られており、一巡した窃盗被害が再び拡大しないか気になっていた。
 職務質問を受けたのは初めて。「不審だと思ったら遠慮せず誰にでも声を掛けて」と伝えると、警察官は力強くうなずいたという。
 いわき支局に赴任して2カ月がたった。住民が戻れない町があり、帰還の足取りが鈍い町もある。意外に思う話を耳にし、理由を尋ねてまた驚き、課題を知ることが多い。応援警察官のように、よそ者の視点で臆せず話し掛け、耳を傾ける大切さを感じている。
(いわき支局長 佐藤崇)