ビートルズのアルバムで代表作「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を聴いたのは高校生の時だった。
 1967年の発売から7年ほど遅れたが、「ロック史上最高傑作」「芸術」「サイケデリックの極致」という作品は衝撃的だった。
 音楽は極彩色で変幻自在の美。詩は時事ニュースを風刺し、国家や社会の欺瞞(ぎまん)をあざけり、子どもを縛る親も批判しながら、「自由に正直に生きよう、真実をありのままに語ろう」とのメッセージに満ちていた。
 「ロックは不良の聴くもの」と親の世代は語っていた。全く偏見だったが、それは権威への反抗や批判的精神を生命とする音楽ゆえだったろう。60~70年代という時代の鏡でもあった。
 「サージェント・ペパーズ」が発売から50年を迎えた。世界の若者に影響を与え、音楽や文学を豊かに融合させたというが、気になるのは「精神」の行方だ。
 いま日本のテレビやネットからあふれる音楽は耳に心地よいが、日々の現実でぶつかる社会や政治への疑い、憤り、批判は聞こえない。それも時代の鏡なのか。ビートルズの残した重い宿題は若者にどう響くか。(論説委員 寺島英弥)