「これはマスト(絶対)」と思った題材を逃したときの後悔は長く尾を引く。
 直近では青森県内で5月中旬、津軽弁を使った不審電話が相次いだという話。
 弘前市の70代女性に「お母さんいるべか」と、息子を名乗る男が金を所望。話し方や津軽弁の抑揚に違和感を覚えた女性が問いただすと、男は「へんとうが腫れている」となどと言い逃れした揚げ句、電話を切ったという。特殊詐欺の被害につながる恐れがあると、県警が警戒を呼び掛けた。
 他社は囲み記事などの扱いで青森県版に掲載した。担当記者のMは「掲載基準に達しない」と、原稿にしなかったのを、デスクの自分も見逃してしまった。
 この場合「不審電話に津軽弁が使われたのが確認されたのは県内初」という点に飛びつきたかった。「いるべか」は「いるべが」と語尾が濁るのが正解。イントネーションも重要だ。突っ込みどころは満載で書きようはいくらでもあった。
 何よりも不審電話をした男の、方言をまねればだませるだろう、という安易な発想が我慢ならない。ちなみに八戸に本社を置く地元紙も記事にしなかった。南部弁をつかさどる誇りか。
(青森総局長 長内直己)