「娘をAさんなどとして扱われるのは違和感があった」「悪いことをしたわけでもないのに匿名で呼ばれるのはおかしい」。強盗殺人と強盗強姦(ごうかん)未遂の罪に問われた被告の裁判員裁判(東京地裁)で、被害者・岩瀬加奈さん=当時(17)=の遺族は実名での審理を求めた。
 近所の男にわいせつ目的で誘拐され、殺害されたとされる千葉の小学3年生レェ・ティ・ニャット・リンさん=当時(9)=も一時匿名で扱われた。しかし父親が「犯人に、殺したのはただの女の子ではなく私の娘と伝えたい」と実名報道を望んだ。
 どんな女の子で、どんな夢を持っていて…表情豊かな写真や映像で、私たちは大切な日常を奪う犯罪の非道を心に刻んだ。何の落ち度もない被害者の名を伏せることは、性被害のタブー視を助長してはいないか。
 刑法が改正され、性犯罪が厳罰化された。強姦罪が「強制性交等罪」となり親告罪でなくなるなど、法律は一歩進んだように見える。一方、被害を知られたくないという人もなお多いだろう。それはなぜか。メディアや社会の方こそが変わらなければならない。(整理部次長 阿久津康子)