仙台市の郊外で休日農家に精を出し、引き揚げようとした夕暮れ時。畑の奥の茂みの中に、青白く光る小さな八つの“点”が見えた。正確に言うと、こっちが見たというより、向こうに「見られている」感じ。
 目が慣れ、やがてそれはタヌキの親子と分かった。母ダヌキと3匹の子ダヌキだった。
 落語に『たぬき』がある。ある男が子どもたちにいじめられているタヌキを助けたところ、恩返しにお金に化けて借金を返済させてくれた。この男、今度はコイに化けてもらって、世話になっている親分を料理でもてなそうとするが…。
 タヌキが律義かどうかは分からないが、臆病なことは間違いない。道路を横切ろうとして車のライトに驚き、よくひかれてしまう。
 ちょくちょく現れるようなら、写真を撮りためてみようか。あの何とも愛嬌(あいきょう)のある顔をアップで撮れば、なかなか面白いかも。こちらの頭は仕事モードになった。畑には幸い、餌のトウモロコシもあるし。
 と妄想は膨らんだが、餌を与えるのはやはりまずい。周りの休日農家の迷惑になる。ということで、撮らぬタヌキに終わった。
(写真部次長 及川圭一)