スポーツのニュースで「泥くさいプレー」という言葉をよく聞く。地味な動きに徹し、チームのために労を惜しまない。報道部なら泊まり勤務の記者に当てはまるかもしれない。
 若手を中心に交代で本社に泊まる。事件や事故を警戒し、火災が発生すれば現場に向かう。なくてはならない存在だ。
 ある祝日の午前。A君は前日に泊まった「明け番」。割り当てられた取材の会場に着いたが、参加者の集まりが良くない。駅の名前を耳にしたので電話で確かめると、東北新幹線が止まる事故が起きていた。
 その日は連休中。「平日より混乱が大きくなる」と考えたA君はJR仙台駅に急行し、足止めされた利用客らを取材した。指示は特段出ていなかったが、「使われなくてもやむなし」とばかりに原稿と写真を出してきた。成果は翌日の紙面を飾った。
 泥くさいプレーは記者としての使命感からか。そう聞くと「いえ、行かないとデスクに怒られると思いまして…」とA君。もしや、何かと話題の忖度(そんたく)か。いや、謙虚なA君のことだ。豊かな想像力ゆえの行動と考えることにしよう。
(報道部次長 沼田雅佳)