東日本大震災で被災した宮城県七ケ浜町の菖蒲田海水浴場が先月、本格的に再開した。歓声を上げる大勢の海水浴客の姿を見て、胸に迫るものがあった。
 脳裏によみがえったのは、今のにぎわいとは正反対の、誰もいない海だ。
 七ケ浜町を担当する塩釜支局に着任したのは震災翌年の2012年。早々に海岸の復旧工事が始まった。工事中の防潮堤から眺める海岸には、人影が全くなかった。がれきは撤去されたものの、細かなごみはまだ砂浜に散乱していた。
 なんと寒々しい光景なんだろう。夏なのに。
 震災以降、延べ6万人以上のボランティアが砂浜清掃に汗を流し、元気を取り戻そうと地元有志が企画した「海まつり」などのイベントも催された。当時は海開きのめどが立たない時期。にぎわいが戻るのは、いつの日になるのか。人々の視線の先はまだ遠かった。
 あれから時は流れた。菖蒲田海水浴場のように、復興の形が見えてきたものもある。ただ、あの「誰もいない海」から今日に至るまで、多くの人の思いや努力が積み重ねられていることを忘れてはならないと、改めて胸に刻んだ。(生活文化部次長 加藤健一)