山形大の小山清人学長は第4志望の繊維工学科にしか入れなかった劣等感を抱え、同大工学部に入学したという。49年前の話だ。
 しかし、ある日のクラス親睦会。友人が「この学科は第4志望だった」と言いだすと、他の級友から「実は俺も」「自分もだ」との声が相次ぎ、結局、クラス全員が第4志望だったことが分かった。不本意な思いは消え、以後、学生生活を心から楽しめるようになったという。
 今年4月の入学式で、小山学長が新入生に語ったエピソードである。
 助教によるアカデミックハラスメント(アカハラ)で自殺した工学部の学生も第1志望の研究室には成績が及ばず、既に悪い評判のあった助教の研究室に入った。待ち受けていたのは深夜まで拘束される実験や長時間の叱責(しっせき)、人格攻撃。研究に充実感を見いだす余裕はなかったに違いない。
 小山学長の学生時代から研究室を取り巻く環境は大きく変わった。それは山形大だけの問題ではない。
 指導教員によるアカハラが横行する研究室を理系学生は「ブラックラボ」と呼ぶ。大学改革の重い課題から目を背けてはならない。(山形総局長 昆野勝栄)