元祖だめんず(ダメ男)とも言える寅さんが騒動を巻き起こす映画『男はつらいよ』。見どころはもちろんマドンナとの恋の行方。
 シリーズ48作は世界最長としてギネス認定された。最多の4作でマドンナになったのが浅丘ルリ子演じる旅回りの歌手リリー。「女が幸せになるには、男の力を借りなきゃいけないとでも思ってんのかい? 笑わせないでよ」と寅さんもたじたじの啖呵(たんか)を切る。
 この夏もう一人、心(しん)のある女性の足跡に触れた。南相馬市ゆかりの作家島尾敏雄の妻ミホだ。戦争中の鹿児島県加計呂麻(かけろま)島で、特攻隊長の島尾と恋に落ちた。島の風景と2人の軌跡は、14日朝刊の写真特集「アングル」で紹介した。
 戦後になってロマンスは一転。ミホは夫の不貞に狂乱する一人の女性として、島尾の代表作『死の棘(とげ)』に登場する。ダメ夫に絶対の愛を求める姿は、恐ろしくもいとおしい。
 『男は…』の最終作はその加計呂麻島が舞台。リリーと寅さんが夫婦のように一緒に暮らす。南の島では男女の間にとても強い磁力線が存在するのかも。時に反発し合うのも、この不思議な力のなせる業か。
(写真部次長 佐々木浩明)