この夏の初め、「片耳の聞こえが悪いなぁ」と思ったら、突発性難聴と診断された。記録的な日照不足と長雨の8月、セミ時雨のような耳鳴りがやまず、鬱々(うつうつ)と過ごす羽目に。
 年なのか日頃の不摂生なのか、原因は分からない。医師は薬に加え「小さな音量で音楽を聴くのもいいですよ」と勧めてくれた。
 職場に近い中古レコード店をのぞいたら、吉田拓郎のアルバム『人間なんて』を見つけた。1971年のLPはタイトル曲を含め、湧き上がるイメージで人間の喜びや悲しみ、迷いや悩みを歌い上げている。
 3曲目に入っている「ある雨の日の情景」が、5年前の記憶と重なった。
 取材で初めて気仙沼市の仮設商店街を訪れた時、屋外のスピーカーからこの歌が流れていた。その日も雨。
 店を再開させた人たちの復興への期待と不安の声が、歌と共によみがえった。今、商店街だった場所は更地に。自力再建を諦めた人も少なくないという。
 レコードを聴いて、あの日の情景が浮かんだ。写真に収めた人たちはどうしているだろう。そう言えば、拓郎の次のアルバムの名は『元気です。』だった。(写真部次長 門田勲)