演歌はあまり聴かない。大仰に回す小節や、汗と涙が肌にまとわりつくような歌詞を敬遠してしまう。
 先日、大型サンマ船の出船送りを取材した。鮮やかな大漁旗や集魚灯に飾られた船が岸壁に並んだ。乗組員の家族や水産会社の関係者は、霧雨に煙る中、福来旗と呼ばれる手旗を振って別れを惜しんだ。
 乗組員を励ますためのステージで気仙沼の郷土芸能とともに披露されていたのは、アルゼンチン出身で日系2世の演歌歌手、大城バネサさんの歌声だった。
 「港」「別れ」「霧」「涙」…。なるほど、この情景は演歌そのものだなあ。なかなかいいじゃないか。
 大城さんは東日本大震災後、たびたび三陸地方を訪れて仮設住宅などを慰問。復興を支援し、みなと気仙沼大使を委嘱されている。
 そういえば以前、大城さんから「タンゴと演歌は、歌の世界が似ている」と聞いたことがあった。
 タンゴとブエノスアイレス、ファドとリスボン、そして「港町ブルース」に歌われた気仙沼。港には愁いを含んだ音楽が似合う。たまには演歌を聴いてみようか。
(気仙沼総局長 菅ノ又治郎)