カメラとは不思議なもので、撮影する瞬間は普通、被写体が視界から消えている。カメラの内部に光を取り込むためにシャッターが開くと、目でのぞいているファインダーの方は真っ暗になってしまう。
 アナログでもデジタルでも理屈は変わらない。世の中のカメラマンは皆、「この一枚」の瞬間を見ていないことになる。
 東日本大震災が起きて間もない頃に撮った現場写真を整理していて、変な気分になった。脳裏に焼き付いた映像と写真が微妙に違っている。
 例えば、2011年3月15日に石巻市の湊地区で撮った写真。カメラを抱え、がれきの山をはいつくばって進むと、向こうに泥だらけの車が転がっている。無残に窓ガラスは割れ、ボンネットがへこんでいた。
 写真は撮ったが、シャッターのタイミングがずれたのか、頭に残る記憶とどうも構図がずれている。
 カメラの腕はさておき、仰天して息をのんでしまったのだろう。あの時の光景は、目を閉じれば今も暗闇の向こうに浮かぶ。心の中のシャッターで瞬間を切り取った、決定的な写真のような気がしてきた。
(写真部次長 及川圭一)