決して文部科学省推奨の四字熟語ではなさそうだ。「面従腹背」。表向きは、相手に服従すると見せかけて内心で背くこと。
 加計(かけ)学園問題のインタビューで前文科事務次官の前川喜平氏が言った。「私の座右の銘は面従腹背。役人には必要な資質です」。以後、あちこちで耳にする。
 宮仕えの処世術として自虐的に語ったのだろうか。二面性は人のさが。裏表のある人は好かれないが、本音を抑え込むばかりではストレスがたまりそうだ。
 面従の一本道を何十年も歩めば、胸のわだかまりを消し去るすべが身に付くという能吏の達観なのだ。
 中国の故事「面従後言」が似た意味。王が「私が道義に背いたら過ちを正し助けよ。後で非難してはならぬ」と部下に諭した。国を治めるための自戒の言葉とも取れる。指導者に徳があれば腹背には至るまい。
 現代日本の忖度(そんたく)政治。徳の有無はともかく権力者への気遣いやおせっかいが事を荒立てる。政治家も役人も国民の方を向いていないことの表れだろう。
 北朝鮮では「陽奉陰違」という罪状で反党行為が糾弾される。国民が命懸けで面従を貫く国よりはましか。
(論説委員 菊池道治)