にじむ人柄をどう表現するかは、活字メディアの醍醐味(だいごみ)だ。特にインタビューや聞き書きは、取材対象の微妙な言い回しをどう文字にするかに気を使いたい。
 今月6日まで朝刊4面に連載した「平成の黄門さま」はそんなシリーズだった。福島県出身で厚生相や衆院副議長などを務めた渡部恒三さん(85)に政治家人生を振り返ってもらった聞き書きだ。福島総局のベテラン記者が繰り返し話を聞いて記事にした。
 読んでいただいた方は気付いたのではないだろうか。語尾に頻繁に「ぁ」が登場したはずだ。例えば最終回10回目の最後の2文はこうだった。
 <こうした気概がなければ国会議員は駄目だぁ。新しい政治の力が、東北からぜひ生まれてほしいなぁ>
 政界を引退して間もなく5年。「平成の黄門さま」が文字通り、ご隠居の身になって、円熟味を増した姿が「ぁ」からはにじむ。
 とはいえ、取材したベテラン記者は少々納得できない様子だった。本人が書いた最初の原稿は「ぁ」ではなかったため。「本当は大きな『あ』だったんですけどね」。連載終了後にぼそりと漏らした。
(福島総局長 安野賢吾)