「市長選になかなか関心が持てない」。過去2番目に低い投票率(49.13%)となったいわき市長選(10日投開票)の取材中、何度となくいわき市民から聞いた言葉だが、知人の場合は意味合いが異なった。
 東京電力福島第1原発事故で市内に避難。仕事も再開し自宅も建てたが、住民登録は福島県富岡町に残したまま。「気持ちの面でもいわきの人間だ、とはまだならない」と言う。
 市政のかじ取りを誰が担うかは避難生活にも関わる。が、避難者同士でも市長選について突っ込んで話すことはなかった。「住民票を移すというところまでは切り替えられていない。中ぶらりんの状態。これがいつまで続くのか、との思いは常にある」と明かす。
 原発が立地する双葉地方などから住民票を移さないまま市内に避難する人は約2万2000人。古里と避難先の間で揺れる人たちをどう支えるかは重要な課題だが、市長選でも大きな争点となることはなかった。
 帰還や移住のどちらか一方ではなく、避難先でしばらく暮らす選択も尊重する仕組みは十分なのか。衆院選でも論戦のテーマになったらいい。
(いわき支局長 佐藤崇)