秋が深まるにつれ、熱々のおでんが恋しい。行きつけの飲食店でも秋分の日から、おでんがメニューに加わった。
 おでんによく入っている焼きちくわは、石巻が発祥の地とされる。「牡丹(ぼたん)焼き」と言われる独特の製法で、焼き上げた表面に牡丹の花びらのような焦げ目模様ができる。
 石巻では1904(明治37)年に焼きちくわの生産が始まったという。明治末には石巻で、60軒以上もの製造業者がひしめいていた。市内の機械メーカーが焼きちくわの製造機器を開発。「川口式」と呼ばれ、大量生産への道を開いた。
 しかし、東日本大震災を経て、石巻市内で今、伝統の焼きちくわを受け継ぐのは被災から再建した3社にすぎない。その3社も震災で失った販路を取り戻せないでいる。
 「石巻で育まれた練り物文化の灯を消してはいけない」。そんな思いを持った有志らが、市内で「石巻おでんプロジェクト」を始めた。地元の練り物などを使った「石巻おでん」の普及に奔走している。
 これからの季節、おでんをバクバク食べてプロジェクトを応援したい。
(石巻総局長 古関良行)