やれ「国難」だ「排除」だと激しい言葉が飛び交う衆院選。しかし心に染み入ってきたのは、この人の、この一言だった。
 「当選しても、一緒にやっていく相棒が見当たらない」
 簡素でほろ苦い言葉を残して、元金融担当相亀井静香さん(80)が政界を去った。
 本当はこんな人だったんだ。思想信条が違うし、所作もがさつで決して好きな政治家ではなかったが、その印象は最後の最後にひっくり返った。
 人生を折り返した人なら、亀井さんの気持ちが痛いほど分かるはず。人は誰でも何かを諦めながら老境に分け入っていく。
 引退会見では「弱肉強食、新自由主義、大都会中心の世の中になってしまった。私がこうしたいと思った世の中とは違う。達成感はない」とも語っていた。
 今の国政に「ハトを守るタカ」の居場所はないのだ。あらためてそう教えてくれる引退の辞だった。
 大きな選挙では、報道する側もいや応なく喧騒(けんそう)の渦にのみ込まれていく。静かに敗北をかみしめる人の言葉にこそ誠はあると、分かってはいるのだが。
(盛岡総局長 矢野奨)