「声を掛けられたらどうしよう」。役所を出る時に思わず身構えてしまう。
 週末の午後、衆院選の期日前投票を済ませた。玄関前にはテレビ局や新聞社の腕章を着けた若者の姿。いわゆる出口調査だ。
 新聞記者も有権者に変わりはない。答えたければ答えればいいし、嫌なら断ればいいのだが、どうもシンプルに割り切れない。
 実は一度、テレビ局の調査員に呼び止められたことがある。四半世紀以上前、まだ駆け出しの頃だ。「お互いさまだから」と思い、投票した候補者や政党の名前を正直に伝えた。
 記者クラブでその話をすると、先輩から「利敵行為だ」と、ひどくしかられた。「なるほど、選挙報道では競争相手。そういうものか」と考えさせられた。
 しかし、今となっては協力しないのも、どうかと思う。締め切り間際、開票途中で「当確」と報道できるのは出口調査のおかげだ。
 正確、迅速な選挙報道と同時に、新聞社は民主主義を支える投票の秘密を尊重する使命も負っている。
 有権者の協力は、だから私たちにとって2重の価値を持つ。胸に刻み、大切にしよう。あすは投票日。(山形総局長 昆野勝栄)