「いいか、おまえら! これだけはしっかりメモしておけ」。大学受験に失敗し、屈辱まみれの十九の春は鮮烈だった。通い始めた東京の予備校。その講師の講義は型破りだが、面白かった。
 講座は英文解釈。文法などは二の次。政治、経済、社会のありようを英語で論評する。名物講師は当時、再起を期す浪人生を奮い立たせるカリスマ的な存在で、教室は常に満員だった。
 「メモしろ」と言われたことで一つだけ覚えていることがある。「陽(ひ)の当たらないところに、陽を当てるのが政治」。肝心の英訳はすっかり忘れたが、30年以上たった今、その言葉の重みを感じている。
 「国難」を掲げ、首相が解散に踏み切った今回の衆院選は、再編で対抗しようとした野党の混乱も相まって、東日本大震災からの復興の在り方の議論は各党とも終始低調だった。
 数合わせの区割り改定で、人口が減る被災地の声は、ますます届きにくくもなった。後に政界入りし、2年前に亡くなった講師は、今回の選挙をどう見るか。
 嘆いてばかりでも始まらない。しっかりと見極めて投票に行こう。
(報道部次長 玉應雅史)