「何年記者をやっているんだ」と怒られそうだが、取材でコメントを求めた後に落ち込むことがある。
 当事者の思いやテーマの趣旨を伝えるコメントの重要度は高い。それなのに相手の話を聞くだけで気持ちに余裕がなくなり、やや唐突に「で、どうでしょう?」と尋ねる始末。長嶋茂雄さんの往年の物まねじゃないか。たびたび後悔する。
 デスク席で読んだ短い原稿のコメントに目が留まった。着せ替え人形「リカちゃん」誕生50周年の記念催事に訪れた女性の言葉だ。かつて遊んだ人形が東日本大震災の津波で流され、同じ物を探しに来た。「似たような人形が見つかり、懐かしい気持ちになった」と話していた。
 担当したのは新人のA記者。催しの取材でいつも複数の人から話を聞くという。記事の女性は4人目。しかもリカちゃんと同じ年に生まれ、名前の読みも同じだった。「取材の神様」は短い原稿でも細部まで努力する人に寄り添うようだ。
 1人の話で済ませることが多く、サボり癖の抜けないこちらは神様から見放されている。「もっと多くの声を聞きなさい」。反省の種がまた一つ増えた。
(報道部次長 沼田雅佳)