ちょっと虚を突かれた。
 休日の午前、古新聞を提げた老婦人を自転車で追い越しざま声を掛けられた。
 「えっ?」「いえ、すみません。おはようございます」。わざわざ自転車を止めたと思ってか、わび、あいさつしてくれた。見ず知らずの人。こちらもあいさつを返す。それだけのことだが、妙にうれしかった。
 仙台と、それ以外の東北各地を行ったり来たりの転勤暮らし。仙台に戻るたびアパートを借りて住む。マンションが立ち並ぶ市街地、国道に近い住宅地。これまでせわしい所ばかりに住んだせいか、あいさつを交わした記憶があまりない。
 今度の仙台のすみかは古くからの一戸建てとマンションが混在し、往来が多い道路から1本、中に入る。あいさつしてくれたのは、住民以外あまり見掛けない土地柄のせいもあろうか。
 2年前まで岩手県南の支局で暮らした。中心部から離れた地へ取材に行くのが楽しみだった。
 運転中、子どもがいる横断歩道で一時停止すると、渡るなりくるりときびすを返し頭をさっと下げる。ほんわり胸が温かくなった。本当はそういう町にずっと住みたいのだが。
(整理部次長 八代洋伸)