日本海側で北朝鮮籍とみられる木造船の漂流・漂着が相次いでいる。この時季、慢性的な食糧不足と言われる北朝鮮の国民は「冬季漁獲戦闘」と称する命懸けの漁に駆り出されるという。近年は国際社会の対北経済制裁の強化もあって、より厳しいノルマが課されているのかもしれない。
 ちょうど2年前、赴任していた青森県の下北半島沖に流れ着いた不審船の取材をした。佐井村の牛滝漁港に陸揚げされた船の内部から、男性4人の遺体が見つかった。村が火葬し、寺院で保管していた遺骨は約半年後、北朝鮮側の要請を受けて返還している。
 由利本荘市に先月23日深夜、木造船で漂着した男性8人は秋田県警に保護され、中国経由で北朝鮮に帰国する手続きが取られた。相手は核実験やミサイル発射による威嚇・挑発を繰り返し、拉致事件を起こしながら放置している国だ。
 遺骨の返還や帰国の調整に当たり、水面下で対北とどのような交渉や駆け引きがなされたのかは分からない。ただ、拉致被害者を取り戻す材料の一つにはなり得なかったのだろうか。日本の厚情が伝わらない歯がゆさが募っている。
(報道部次長 末永秀明)