黄ばんだ小学校時代の集合写真をたまたま見ていたら、鮮烈なある味がよみがえってきた。「まずかった」というただそれだけで、不滅の記憶になった。
 4時間目の授業が終わると、脱脂粉乳の臭いを漂わせた大きなヤカンが教室に運ばれる。この臭いがしただけで、すっかり憂鬱(ゆううつ)な気分になった。
 昭和40年代の石巻市の給食はコッペパン、マーガリン、脱脂粉乳がレギュラーメンバー。それに日替わりのおかずが付く。スプーンはもちろん先割れ。
 ほどほどに温められた脱脂粉乳は何とも嫌な臭いを放ち、へこみだらけのアルマイトのおわんに入って机の上に並ぶ頃には、表面に薄い膜が張っていた。
 食べ物を残すことは許されない時代。飲まなければ昼休みに校庭で遊ばせてもらえなかった。仕方なく鼻をつまみ、息を止めてぐっと飲み込むと、口の中に臭みが広がる。
 食べ物や料理の写真はずいぶん撮ってきた。紙面に載ってから、われながら「うまそうに撮れた」と感心したこともあるが、脱脂粉乳をおいしそうに写す自信はとてもない。その機会がなかったことに感謝。
(写真部次長 及川圭一)