栃木県那須町に「殺生石」という観光名所がある。妖狐が巨大な毒石に身を変え、鳥獣の命を奪い続けていると伝わる。
 福島県南の支局に勤務していた頃、何度か訪ねた。イタチやキツネが倒れているのを見た日は、町の担当者から「今日は近付かないで」と注意された。
 毒の正体は硫化水素ガス。付近は温泉地帯で、天候などにより、ガスが滞留することがあるのだ。
 温泉が恋しい季節だが、硫化水素ガスがこもるのを嫌って、浴室の窓を全開にしている所がある。湯に漬かれば熱く、出ると寒い。悩ましいが、やむを得ないのだ。
 湯沢市の泥湯温泉では、2005年12月に4人が死亡する事故があった。仙北市の乳頭温泉郷でも15年に源泉管理の作業員ら3人が命を失っている。いずれも、硫化水素ガスを吸い込んだのが原因だった。
 今年1月に環境省が全国の温泉施設の硫化水素ガス濃度を調べたところ、5道県市の33浴槽で国の基準値を超えていた。施設名は明らかにされなかったが、「県市」は青森、宮城両県と、青森、山形両市だった。頭の隅にとどめておこう。
(整理部次長 野村哲郎)