「これ、もう捨てたらいいんじゃない。カビ生えてるよ」。大掃除をしていた妻が、押し入れの奥から古ぼけたカメラバッグを引きずり出してきた。
 50センチ×35センチ×25センチ程度の頑丈な黒い箱。社内でもこんな大きな物はもう使っていないが、見るだけで肩がジンジン痛んでくる思い出の品。1998年の長野五輪で随分お世話になった。
 アナログからデジタルへの移行期で機材がとにかく多くて重かった。レンズは望遠と長短ズーム計数本、ストロボに予備バッテリー、フィルター。カメラはアナログに加えて、ごろっと大きくて不格好なデジカメを、このバッグに詰め込んだ。分厚いノートパソコンもあったっけ。
 あれから20年。機材のほとんどはスリム化され、取材に出るときの格好もスマートになった。
 肩の力が抜けて写真の腕も上がってほしいところだが、見果てぬ夢。若い頃、カメラバッグを肩にして流した汗と涙の量が足りなかったのかもしれない。
 妻に押し付けられるようにバッグを受け取り、こっそり物置へ。久々に担いでみたら、中は空っぽなのに重かった。(写真部次長 長南康一)