神戸市に「人と防災未来センター」を訪ねたことがある。阪神大震災の関連資料を収集し、災禍の記憶を後世へ伝える施設だ。
 「すぐに街の復興が始まったので、神戸には震災遺構がほとんど残っていないんですよ」「遺構や遺物を残そうと話し合いが本格化した時には、震災からもう4年がたっていました」
 東北再生へのヒントを得ようと取材した折、こんな話を伺った。
 東日本大震災では阪神の教訓がある程度生かされたのではないだろうか。保存か解体かの判断を次世代に委ねた宮城県南三陸町の防災庁舎の例もあった。
 岩手県大槌町で今、多くの犠牲者を出した旧役場庁舎の解体論議が再燃している。町長は「取り壊し方針を掲げて当選した責任を果たさなければならない」と思い詰めているらしい。
 政策全般にわたって町民の白紙委任を取り付けたわけでもないのだから、そんなに肩肘張らないで。「一緒に考えよう」と広く町民に呼び掛けてみたらどうだろう。思わぬ知恵が飛び出すかもしれない。
 ちょうど今年は五箇条の御誓文発布150年。万機公論ニ決スベシ、である。
(盛岡総局長 矢野奨)