報道部の新人記者には正月気分に浸れなかった人もいるだろう。春の異動前に「卒論」が待っているからだ。大学の卒業論文ではない。自らテーマを設定し取り組む連載記事だ。
 テーマは児童自立支援施設の現状、東日本大震災の仮設住宅の人模様、深夜から朝方まで活動する人々と硬軟さまざまだ。素材探しに各回の要点をまとめたコンテ作り、取材と写真の撮影、執筆。普段の仕事をこなしつつ長丁場の作業に挑む。書き直しや再取材を命じられるのは当たり前。胃の痛い日々が続く。
 初任地から本社に戻る時、重症心身障害児をテーマに卒論を体験した。不勉強と準備不足から作業が遅れ、転勤直前に何とか間に合った。不出来な原稿を直す上司らに迷惑を掛け、送別会を終えて執筆に戻る日もしばしば。原稿より多くかいたのは、冷や汗や脂汗の方だった。
 新人の卒論は間もなくテーマが出そろうはずだ。重圧と向き合う心境や指導するキャップの苦労をよそに思うのは「朝の来ない夜はない」ということ。こちらは初任地の苦い教訓を隅に追いやり、のんきに記事を読む日を楽しみにしている。
(報道部次長 沼田雅佳)