「ときをためる」。その言葉に引かれて昨年末、一冊の本を買った。「ききがたり ときをためる暮らし」(つばた英子・つばたしゅういち著)。手間と時間をかけて丁寧に暮らしを楽しむ著者の老夫婦のライフスタイルを伝える。
 「自分の手で暮らしを見据えたストックをつくること。それが<ときをためる>ということです」と記す。自宅敷地内に設けたキッチンガーデンや雑木林で野菜や果実、木の実を育て、食材に利用する。いいものを慎重に選ぶ。間に合わせのものでは済ませず、買えるまで気長に待つ。家具は35年かけて、一つずつ買いそろえた-という。
 庭のない集合住宅で暮らし浪費してきたわが身だが、考え方は学びたい。「老後資金はウン千万円必要」といったネット情報を見てげんなりしていたから、読後は心が救われた。
 家人がパプリカを調理する際に取り除いてプランターにまいた種が育ち、実を1個付けた。何だかうれしくなった。「本当の豊かさというのは、自分の手足を動かす暮らしにあると思いますよ」とも書いてあった。水やりも心掛けようっと。
(生活文化部次長 芳賀紀行)