「貞観津波の碑がある」と聞いて、東松島市の宮戸島を訪ねた。郵便局の向かい、道路脇の空き地に高さ60センチほどの自然石が立つ。石にかすかに残る文字は風化して判読できない。
 「来世に伝える大きな地震。石碑にはそんな趣旨の言葉が刻んであったようです」。そう説明してくれたのが、近くに住む観音寺住職の渡辺照悟さん(87)。子どもの頃から、1000年前に置かれた石碑だと教えられて育った。
 1100年以上前の869(貞観11)年、貞観地震が東北を襲った。史書「日本三代実録」には津波が多賀城の城下まで押し寄せ、溺死者が1000人に上ったと記されている。
 宮戸島では貞観地震の時、二つの大津波が石碑の立つ島の中央部でぶつかった、と伝わる。住民たちは口伝により、貞観津波を教え残してきたのだろう。
 渡辺さんは東日本大震災を振り返って言う。「宮戸の多くの人が激震の後、この石碑より高い場所に逃げて助かりました」
 古い石碑のすぐ隣には真新しい石碑が立つ。今回の震災を踏まえて渡辺さんが建立した。「貞観の碑に感謝」と彫られてあった。
(石巻総局長 古関良行)