「くれぐれも、気を付けて」。暴風雪の荒天が続いた年の瀬、秋田県北へ車で取材へ出掛ける若手記者の背中に声を掛けた。
 雪道の運転では苦い経験がある。初任地で迎えた初めての冬、取材に向かう途中で脱輪し、目的地にたどり着けなかった。スキー客の遭難騒ぎがあったときも山道で車が動けなくなり、自分が遭難しかけた。
 若手記者は安全運転を心掛けているだろうか。それでも、事故に巻き込まれることはある。心配しだすと、きりがない。
 ふと、母方の亡き祖母のことを思い出した。信心深い祖母は孫たちが遠足や修学旅行に出掛けると、帰宅するまで仏壇の前で無事を祈り続けていた。
 そこまでしなくてもいいのでは。当時はそう思っていた。でも、年を重ねた今は、祖母がどのような思いでいたのかが、分かるような気がする。
 冬型の気圧配置が強まり、冬将軍が居座った今月下旬、県内は再び暴風雪に見舞われた。記者たちが取材予定を書き込むホワイトボードに遠方の市町村名が書かれている日は、その記者の顔を見るまで何となく落ち着かなかった。
(秋田総局長 宮川宏)