これも新聞の伝統なのだろう。時代を問わず、新聞社の重要な使命に人事報道がある。閣僚や大組織のトップといったナショナル級から、地元企業、教職員、県や市町村の職員に至るまでかなりの紙面を割いて掲載する。無関係な大半の読者には読み飛ばされる最たる記事かもしれない。
 「ヒト」「カネ」は権力の源泉だ。人事権者の意思や組織の方向性を映し出すだけに、取材は大切だ。加えて地元紙のお家芸に県や県警、市、教職員などの人事予想記事がある。担当記者はさまざまなルートを通じて取材を積み重ね、独自の「人事名簿」を作る。
 かつて、とある役所で人事取材を経験した。人事当局は「あんたに関係ないだろう」と絶対に口を割らない。一方、他の幹部職員は無関心を装いつつ、さまざまな解説をしてくれる。のめり込んで取材し、1週間もすると、役所の人間関係や人物評価がおおむね把握できるようになる。
 「これも権力の監視」と言い聞かせつつ、取材はかなり俗っぽい。経験から言えるのは、みんな人事情報が大好きということか。翻ってわが身は-。粛々と辞令を待つのみである。
(報道部次長 今里直樹)