取材用の車に長靴を常に積んでいる。これを履くのは、火事の現場の取材など気が重いケースが多い。
 3年前の豪雨の被害取材でも履いていた。歩いて取材中に深みに落ちて頭まで水没した。家屋が浸水して避難した住民に「あんた、ずぶぬれだけど大丈夫か?」と逆に心配され、「皆さんが大変な時にすみません」と頭を下げた。
 昨年は、夜に発生したある事案の取材で一晩中履き放しだった。真っ暗な山中の道を、カメラマンを乗せて車で走っていたら急に左前方が沈むように傾いた。
 側溝に左前輪が落ちてしまったのだ。「こんな時に、何やってんだ俺は…」。焦った。付近に人はいるが、事案への対処で忙しそうで緊張感が伝わる。「溝に落ちた車を引き上げるのを手伝ってください」と言える空気ではない。
 「悩んでも仕方ないよ」とカメラマン。合流した別の記者と3人で車体の下部を抱え、「せーの」と声を合わせると、何と車が持ち上がり道に戻すことができた。車重の軽い車だった。どうにか周囲に迷惑をかけずに済んだ。
 あわてんぼの記者が長靴を履いている時は要注意だ。
(登米支局長 本多秀行)