「相変わらずの人気だなあ」と改めて思った。東北が生んだ国民的作家、宮沢賢治のことである。単なるブームではない。作品世界や生き方が日本人の心性にマッチしているのだろう。
 第158回芥川賞、直木賞はそれぞれ若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」、門井慶喜さんの「銀河鉄道の父」が選ばれた。くしくも賢治から着想したり、題材にしたりした作品が同時受賞した。
 遠野市出身で、東北弁を生かした若竹さんの小説は、タイトルを賢治の詩「永訣(えいけつ)の朝」の一節から採った。門井作品は賢治の父・政次郎の視点で語るふがいない息子の物語。賢治像のイメージの幅を広げた。
 20年以上前の1996年、取材に駆け回っていた花巻市は、賢治生誕100年祭に沸いていた。郷里での足跡をたどる連載を担当し、国内外のファンの多さに目を見張った。賢治ワールドは間口が広く、文学だけでなく自然科学、環境、教育、宗教など入り口が多岐にわたるためだという。
 今も賢治関連本の出版は盛んで、読書欄担当には毎月のように新刊本が届く。できるだけ賢治の世界を紹介できればと考えている。
(生活文化部次長 新迫宏)