若い時に見聞した大事件は、遠い外国のものであっても、忘れ難いらしい。1970年代に起きた米国のウォーターゲート事件は、トランプ大統領のロシア疑惑に絡んで話題に上ることが多く、ニュースに触れるたびに、頭のどこかで記憶がうごめくのを覚える。
 事件は、72年の大統領選に絡んだ同年6月の民主党本部侵入に端を発し、74年8月にニクソン大統領が2期目途中で辞任するまで、米国の政治を揺るがし続けた。20年後の94年に英国のBBCがニクソン氏ら当事者の詳細な証言を交えてドキュメンタリーを制作、日本でもテレビ放映された。
 描かれたのは、世界最強の権力と法の支配を巡る闘争だ。大統領の司法妨害容疑や側近の裏切り、特別検察官の解任…。生々しいドラマが次々と演じられる。
 印象的なのは、大統領に背き、事件もみ消し工作を捜査当局へ証言をすると告げた法律顧問ディーンに、首席補佐官ホールドマンが吐いた言葉だ。「チューブから出た歯磨きは、もう元には戻らないんだぞ」。昨今のロシア疑惑でも、かなりの歯磨きがチューブから押し出されているようだが、結末はまだ見通せない。
(整理部次長 宮本伸二)