不思議な猫と出会った。東日本大震災後、岩手県沿岸の高台の住宅地に現れた。どこかで飼われていたのか人懐こい。数軒が並ぶ認知症の高齢者がいる家庭を巡回していた。家に上がったり、庭に咲く花を一緒に眺めたり、甘える姿が癒やしてくれた。
 2014年9月の本紙に、岩手、宮城、福島の被災3県で「高齢者相談急増25万件」の記事が掲載された。大震災後に、計37市町村の6割超が「認知症による要支援、要介護度の悪化」の相談が増えて深刻化していると伝えている。デスク業務をしていても、認知症の記事に触れる機会は少なくない。
 不思議な猫が、認知症の高齢者に近寄らなくなることがあった。その高齢者は直後に体調を崩し、新たな病気が見つかった。コミュニケーションが上手に取られなくなった患者のメッセージを家族に知らせてくれていたのか。ある家のあるじが亡くなる数日前、この猫は来なくなったという。次に現れたのは遺骨になって家に帰った時だった。窓の外から遺影を見ていた。
 猫好きではないが親しみを感じている。ただ、私にはなぜか懐いてくれない。
(整理部次長 古里直美)