東京電力福島第1原発事故の風評を拭い去るのは容易ではない。放射性物質濃度検査の徹底で安全性を訴えても、全ての人には理解されないのが現実だ。
 福島県産の農林水産物は取引価格が事故前の水準には戻り切れていない。輸出となればなおのこと。タイで起きた事例は典型だ。
 福島県相馬沖で漁獲されたヒラメなどを、バンコクの日本料理店で提供するフェアが中止された。原発事故後、福島産鮮魚の初の輸出となっただけに、関係者は大きく落胆している。
 つくづく「安心とは何なのか」と考えてしまう。データなど科学的根拠を挙げて「安全性」を主張しても、簡単には「安心感」を抱いてもらえない。
 わが身を振り返ると、「安全」「安心」という言葉を安易に使ってきたと反省している。例えば産直に関する取材。「地元産は安全安心」などと消費者の反応をそのまま記事にしたことが何度かある。農薬や化学肥料の使用実態を確認すべきだったと、今は思う。
 どうすれば、風評を払拭(ふっしょく)できるのか。徹底した「安全性」の確認と併せ、「安心」の本質を問い直すことが必要な気がする。
(福島総局長 安野賢吾)