山形で手軽に味わえるグルメといえば、そばやラーメンが思い浮かぶが、おととし春に赴任して以来、定番の麺類と同じぐらいの頻度でよくパンを食べる。ひそかに山形は、パンの隠れた名所だと思っている。
 特徴を挙げるなら、具だくさんの店が多いところか。パン生地のおいしさもさることながら、タマゴサラダ、ハムとチーズなどがたっぷり入っている。山形市大野目のパン屋もそんな店の一つだ。
 東日本大震災で被災した宮城県に対する山形県の後方支援の連載に向けて、下調べする中でその店を知った。震災翌日の3月12日から19日まで毎日、売り物とは別にバターロール800個を石窯で焼き、日赤山形県支部を通じて仙台市内の避難所に届けていた。
 隣県の被災者の窮状を伝えるニュースに、店主は何か行動を起こさずにはいられなかったという。連載の取材では、山形県内のそんな頼もしい隣人たちにたくさん出会った。
 ジャムを添えたバターロールに心当たりがある皆さん、あの時、避難所で元気をもらったパンは、この店が焼いていたものかもしれませんよ。(山形総局副総局長 須藤宣毅)