3月だからというわけでもあるまいが、先月は各地で東日本大震災や原発事故に関連する裁判の判決が相次いだ。避難者による古里喪失の訴訟、津波犠牲者遺族の賠償請求、建設中の原発の差し止めもあった。
 原告にとって納得できる判決ばかりではなかった。震災から7年。積み重なる司法判断を見ながら、国や電力会社、自治体の責任の重さを考えさせられる。
 例えば、津波で家族を亡くした人たちの多くは賠償を求めるというより、近しい者の不幸な死の理由を早く知りたいだけなのだ。
 たとえ勝訴しても上級審での争いにまた胸を痛め、敗訴となれば血涙を絞るようなつらい日々が続く。遺族らに長い待ち時間を強いるのは酷ではないか。
 「法的責任の徹底追及」と「公正で速やかな救済」のバランスをどう取るべきか。難しい課題だ。
 全国の裁判に目を配り、提訴や判決を取り上げるのが仕事ではあるが、実際にはほんの一握りしか伝えていない。年間の訴訟事件は刑事、民事合わせ約90万件。それぞれの被告や原告にも同じように苦悶(くもん)や悲しみがあるのだろう。及びもつかない法廷の深遠である。
(論説副委員長 菊池道治)