今はどうか知らないが、かつて進学や就職の願書には「尊敬する人」を書かせる項目が付きものだった。志願者の人間性までは測れないにしても、その価値観を手っ取り早く推測するのには重宝だ。自分も入社の際に数人の名前を挙げた。
 その中の1人、マーチン・ルーサー・キングが亡くなって今月4日で半世紀になった。追悼し業績を振り返る記事が、紙面でも紹介されていた。
 彼が凶弾に倒れた当時の報道をおぼろげながら覚えている。「アメリカの偉い牧師さんが殺された」と親から聞かされ、子供心に世の不条理を感じて、暗い気持ちになったものだ。
 中学・高校の頃、英語の教科書にあの名演説「私には夢がある」が取り上げられていた。その後も、運命を予感しているかのような、暗殺の前の晩の演説「私は山の頂上に登ってきた」などに心を揺さぶられた。
 言葉には力がある。社会を変えることもできる。そう教えてもらった。
 彼の生涯は、人間の尊厳を守るための闘いだった。報道機関にとっても、真実を伝え人間の尊厳を守ることこそが生命線。尊敬は今も変わらない。
(報道部次長 菅ノ又治郎)