江戸の敵を長崎で討つと言ったら、ちと大げさか。
 今からちょうど10年前、世界規模で乳製品の品薄騒動が起きた。盛岡市民のソウルフード「福田パン」も、断トツ1番人気の「あんバター」が一時「あんマーガリン」になった。
 こりゃ一大事。盛岡に勤務していた後輩に「早く書け」と電話した。ところが「あんバター、好きじゃないっす」などと口答えする始末。まんまと他紙に先を越されてしまった。
 記者は抜いた、抜かれたが日常の商売。暮らしのちょっとした変化から世界の動向を読み解くセンスも大事だぞと言えたら格好良かったが、当時はそこまでの知恵もなかった。
 時は下ってつい先日。こちらも盛岡市民のソウルフード「じゃじゃ麺」元祖の店で、張り紙が目に留まった。何十年も価格を据え置いてきたが、原材料費の高騰や物流費の上昇で、ついに値上げするという。
 同じ轍(てつ)を踏んでなるものか。即座に記事を載せた。
 「敵は討ったぞ」とくだんの後輩に連絡したら「先輩、相変わらずじゃじゃ麺好きっすね」と笑われた。値上げの記事は、どーこも追い掛けてくれなかった。
(盛岡総局長 矢野奨)