自然の力を借りれば加工費はただ、だからなのか、冬の寒さを利用して作られてきた食品は少なくない。
 宮城県内なら大崎市岩出山の「凍(し)み豆腐」。タンパク質成分の塊ともいえ、素朴な風味と歯触りは捨て難い。それに丸森町筆甫の「へそ大根」。
 輪切りにした大根をゆでて竹串に差しすだれ状につるす。乾物になると串であいた穴がへそのよう。これも煮物にすれば、冬大根の甘みとうま味がぎゅっと濃縮されていて味わい深い。
 夜の寒さで凍り、昼に陽光を浴び解けては乾く。この繰り返しによって豆腐も大根も栄養成分と味を濃くするとか。その上、「特有の日向香(ひなたか)という太陽のにおいが付く」と、発酵学者の小泉武夫さんが著書で楽しげに書いていた。太陽エネルギーの恵みにもありつけるから。
 100軒以上あった凍み豆腐の生産者は、今や6軒。へそ大根作りは震災後、存続の危機に立たされながらも、援農ボランティアらの手も借り持ち直しているという。自然と共に生きた先人の知恵と思想を何とか次代へとつなぎたい。(2017・2・21)