<雛(ひな)あらば娘あらばと思ひけり>
 正岡子規は生涯独身だったが、そんな句を詠んでいた。亡くなったのは35歳。娘を、家族を欲しがっていたのだろうかと、その心の内を思う。
 雛飾りが、東北の方々で公開されている。それぞれに味わいがあって面白い。
 宮城県南・丸森町の斎理屋敷はおなじみだろう。大広間に江戸時代の雛人形が何組も飾られている。火鉢に当たりながら、館長の佐藤勝栄さんと話ができる。「雛壇の真ん中に独特な形で座った三人官女があるでしょ。あれを納める木箱には嘉永4年と書いてあります。ペリー来航(1853年)の2年前ですよ」
 大崎市の観光施設「醸室(かむろ)」には、つるし雛が滝のように飾られている。茶髪のビキニギャル雛などモダンな飾りもあって楽しい。つるす細工物には本来、決まりと意味があったと聞いた。「巾着」はお金に困らないように。「トウガラシ」は娘に悪い虫が付かないように。
 いずれ、あでやかさとともに、子を思う親の気持ちが伝わり温かい。子規が見たら、どんな句を詠んだだろう。(2017・3・2)