ひと月ほど前、名取市閖上地区で東日本大震災の被災者に当時の話を聞く機会があった。「この辺は津波が来ない所だと、住民は思ってました」。その男性は自宅ごと流され、翌日夕方救出された。
 閖上の象徴、日和山のふもとに石碑があった。1933年3月3日の昭和三陸地震で、津波に襲われたことが刻まれ、用心するように呼び掛けている。6年前の大津波で横倒しになった。
 33年には人的被害はなかったという。80年後に伝わらなかったのは、そのせいではないか。「津波は来たが被害はなかった」が「被害が出る津波は来ない」に、さらに「津波は来ない」と変わっていったのではと想像をたくましくした。
 かつて勤務した福島県浜通りでも、地元の人は「この辺りには来ない」と話していた。常襲地帯の古里、岩手とは違う遠浅の海。うらやましく感じたが、やはり浜通りにも牙をむいた。
 あの日の映像を度々目にする時期がきた。正視に堪えないとはいえ、津波の脅威があれほど多く映像に捉えられたのはかつてない。伝世にはきっと役立つ。(2017・3・3)