「品物は直接口を利かないけれど、品物が無言のうちに話してくれる」。古美術鑑定家中島誠之助さんが自著『ニセモノ師たち』に書いている。だから書籍に頼るのではなく、本物を一生懸命見ることで眼力が鍛えられるのだという。
 目利きを自任する中島さんがテレビ番組『開運!なんでも鑑定団』で、2500万円の値を付けた「曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)」を巡って真贋(しんがん)論争が起きている。曜変の研究を続ける陶芸家が鑑定結果に異を唱え、放送倫理・番組向上機構に番組内容の審議を求める事態にまで発展した。
 中国で12~13世紀に作られた曜変天目は、漆黒の宇宙に浮かぶ星雲のような斑文が特徴で、妖しい輝きを放つ。現存するのは国宝の3点だけ。陶芸家は「現代中国で作られた『まがい物』と似たタイプにしか見えない」と主張している。
 テレビ局には専門家の再鑑定に応じる気はないというものの、骨董(こっとう)ファンとしては品物が無言で語る「真実」を知りたい。偽物ばやりの当世だが、いかなる結果が出ても「フェイク(偽)ニュース」なんて、やぼなことは言いませんから。(2017・3・8)