「破袋(やぶれぶくろ)」という銘の伊賀焼の水指に、くぎ付けになった。へたり込むように下膨れになった胴の下に、十文字のひび割れ。まさに異形の相だが、重厚な存在感に圧倒される。東京・上野の東京国立博物館で開催中の特別展「茶の湯」(6月4日まで)で、間近に見てきた。
 本来であれば、失敗作として捨てられる運命にあったかもしれないのに、武将茶人古田織部が「これ以上の傑作はない」と絶賛したと伝わる。炎が偶然もたらした傷に美しさを見いだしたのか。
 織部は不完全な「破調の美」を好んだ。わざわざ、いびつにゆがめた茶わんをプロデュースしたとも。併せて展示されている「黒織部百合文沓茶碗(くつちゃわん)」「黒織部菊文茶碗」も、その流れの作だろう。
 マイナス部分を否定的に捉えずに、そこに新たな価値を見つけて愛(め)でる。欠点ばかりをあげつらうような今の世の風潮とは一味違う。思えば「臆病」と「慎重」、「無謀」と「大胆」は紙一重に違いない。見方一つで正反対に変わるのだ。
 「織部流」に触れて、ほんの少しだけ度量が広くなったような気がした。